前回の記事ではリン酸鉄リチウムバッテリーを使った自作電源を紹介しました。今回はこの自作電源の制作過程を解説していこうと思います。
バッテリーの電圧測定
今回は30Ahのセルを4つ使用します。まずはバッテリー電圧を測定してちゃんと定格の3.2V出ているか確認します。
4つのセルを一つ一つ測定して3.2V前後の電圧が出ていればOKです。極端に電圧が低い場合は不良品の可能性があります。
直列接続して12Vバッテリーを作る
リン酸鉄リチウムバッテリーは一つのセルが3.2Vあります。バッテリーシステムとして使うには12Vか24Vの電圧がないといけません。
今回は12Vでシステムを組む予定なので3.2Vのセルを4つ直列接続して12.8Vにしてあげます。
4つのセルをテープでまとめます。カプトンテープという耐熱性や対化学薬品性に優れたテープを使うのがベストなのですが手元になかったので養生テープでまとめました。
付属の金属バーで4つのセルを直列接続します。
このとき手が滑ってボルトや金属バーなど、導通するものをプラス端子とマイナス端子に同時接触させてしまうとショートして火花がでるので十分気をつけて作業してください。
BMSに丸型端子を圧着する
次はBMSの配線をバッテリーに接続するのですが、BMSの配線は初期状態だとむき出しのままなのでバッテリーに接続することができません。よって端子を取り付ける必要があります。
メインの太い配線は裸圧着端子を取り付けます。裸圧着端子はホームセンターの電材コーナーに売っているので、BMS本体とバッテリーのボルトを持っていき現物合わせで丁度いいサイズを選んでください。
失敗談として、配線被覆にAWG18と表記されていたのでピッタリサイズの裸圧着端子を買ってきたのですが銅線にメッキ加工がされており、若干太くなっていたため圧着端子に差し込むことができませんでした。仕方ないのでもうワンサイズ大きい端子を買ってきました。
裸圧着端子を圧着する工具は、赤い柄のJIS規格のもの使うと決められているのですが、結構高額です。
安いものだとJIS規格じゃない工具も売られているので自己責任でこちらを使うのもありですね。
バランスリードにはエーモンの丸型端子を取り付けました。
エーモンの丸型端子は電工ペンチのギボシをかしめる部分で取り付けることができます。
BMSの配線
今回使用したBMSはJBDというメーカーの80アンペアタイプ、Bluetooth端子付きのものを購入しました。
BMSを購入する際は 4S、 Lifepo4、 UART を選択しておけば間違いないです。
4Sは4つのセルに対応、Lifepo4はリン酸鉄リチウムバッテリー、UARTはBluetooth端子付きという意味です。
画像の販売ページではGift Blut tooth moduleと記載されているのでBluetoothモジュールがセットで送られてくると思いますが、他のセラーだと別売りのパターンもあるので気をつけてください。
配線図を見ながら配線します。配線が終わったらバッテリーの直電圧とBMSを通した電圧を測定ます。同じ数値が出たら正常にBMSが動いていますが、数値が違うと正常動作していないので配線が間違っているか、もしくはBMSが故障している可能性があります。
負荷をつなげる
配線が終わったら好きな負荷をつなげてください。僕は埋込式のUSB端子などを取り付けました。
一応負荷にはスイッチを付けました。スイッチは家庭用の片切スイッチを使ったのですが許容電流が15アンペアなので15アンペア以下の負荷を接続しないといけません。
充電端子はアース付きコンセントを取り付けました。アース端子のおかげでチャージコントローラーからきた電気を極性を間違わずに充電することができます。
バッテリーケースに収める
バッテリーケースはカインズの11番のハードコンテナがドンピシャサイズでした。
こいつにスイッチプレートや埋め込みUSBの穴を開けてうまいこと取り付けました。
配線の種類、太さについて
You Tubeのコメント欄で配線の種類や太さについて教えてほしいとコメントがありましたので解説します。
銅線の種類について
撚り線
細い導線を撚り合わせて作られているので柔軟性がある。単位はsqまたはmm2
単線
一本の銅線で作られています。頑丈だけど曲げにくい。単位はmm
許容電流について
電線の太さは電流で決まります。「電線 許容電流」で検索すると表が出てくるのでそれを見て決めてください。
※許容電流を下回る電線を使用すると発熱して大変危険です。最悪の被覆が燃えて火事になる可能性があります。
具体的な計算
僕の使用環境だとマックス150Wくらいの消費電力です。リン酸鉄リチウムバッテリーの定格電圧は12.8Vです。
消費電力(W)÷電圧(V)=電流(A)の式に当てはめると
150W÷12.8V=11.7A
となります。なので11.7A以上流せる電線を選べばOKです。
今回の自作電源では2.0mmの単線を使用しました。許容電流は35Aなので十分な余裕があります。
もっと大電流を流す場合
電子レンジなど大電流家電を使いたい場合もう少し計算が複雑になります。
電子レンジは500Wで動かしていても実際には2倍くらい電力がかかっているそうです。よって1000Wで計算します
1000W÷12.8v=79A
計算だと79A以上に対応したIV線が必要になります。
表を見ると許容電流が88Aの14mm2のIV線を使えばいいのですが余裕を持って22mm2にすれば安心かもしれません。
大電流なら24Vシステムのほうがいい
12Vシステムで電子レンジを動かそうとすると22スケアの電線が必要になりますが、太くて取り回しが悪いので24Vシステムで組むことをおすすめします。
リン酸鉄リチウムバッテリーの24Vの定格は25.6Vです。電子レンジの消費電力が1000Wなので
1000W÷25.6V=39A
なので余裕を持って8mm2のIV線を使用すれば安心です。バッテリーの電圧を高くすれば流す電流が少なくてすむのです。
まとめ
今回は284Wh(30Ah)の小容量のポータブル電源を作ったのですが、タブレットやノートPCを充電する程度なのでこの程度の容量で十分だと思いました。
仮に電子レンジやドライヤーなどの大電流の機器を使いたい場合、もっと大容量のバッテリーとBMSを用意しなければいけません。また1500W以上の正弦波インバーターも必要になってくるので制作費は倍以上になると思います。
完全オフグリット生活を目指すなら作ってみる価値はありますが、キャンプでちょこっと電気がほしいだけなのでそこまでのシステムを組む必要がないと思いあえて小容量のバッテリーにしました。
コメント
このバッテリーを2セット並列接続する場合はBSMか2個必要ですか
それとも1個で8本のBSMを使うのでしょうか
教えて下さい
2セット並列接続したいなら2個bmsが必要ですね。ただし、容量を増やしたくて並列接続したいのならおすすめしません。最初から容量の大きいセルを買ってbms1個4本線で作るほうが安定性が高いバッテリーができます。
ありがとうございました
やはり容量アップの並列接続は
良くないのですね